良い匂いにつられて甘い物やカロリーの多い食べ物を食べてしまうことってありませんか?
本記事では、あることをするだけで良い匂いのする不健康な食べ物の誘惑を軽減できるという2019年にサウスフロリダ大学から発表された研究 [1] を紹介しています。
中学校の食堂での実験
実験内容
アメリカの中学校の食堂で行われた900人の学生を対象とした実験です。
以下のように3つの日に分けて食堂をある匂いで満たしました。
- 1日目:ピザ(不健康な食べ物)の香りを充満させる
- 2日目:リンゴ(健康な食べ物)の香りを充満させる
- 3日目:無臭
その日に購入された健康的な食べ物と不健康な食べ物の割合を観察します。
実験結果
以下の図は左からピザの香り、リンゴの香り、無臭の日における購入された健康的な食べ物と不健康な食べ物の割合です(黒棒が健康的な食べ物、白棒が不健康な食べ物)。ピザの匂いを充満させた日は不健康な食べ物が21.43%でしたが、リンゴの匂いを充満させた日は36.96%でした。
つまり、ピザの匂いを長時間嗅いでいると不健康な食べ物に対する購買意欲が低下するということです。
ちなみにリンゴの香りの日と無臭の日で実験結果に差はほぼ無かったっぽいです。
スーパーマーケットの食品販売の実験
実験内容
今度はスーパーマーケットにおいてある香りをランダムな時間に発生させ、客の購買内容を観察しました。
その匂いは、クッキー(不健康な食べ物)の香りとイチゴ(健康な食べ物)の香りです。
実験結果
以下の図は左からクッキーの香りとイチゴの香りにおける客が買った商品の割合です。黒棒が健康な食べ物、グレー棒が不健康な食べ物、白棒がどちらでもない食べ物です。
クッキーの香りを出している時間帯は不健康な食べ物が29.53%を占めており、イチゴの香りを出している時間帯は45.41%でした。
つまり、クッキーの匂いを長時間嗅いでいると不健康な食べ物に対する購買意欲が低下するということです。
以上のような結果が得られた理由は、嗅覚情報が味覚情報に干渉し、ピザやクッキーの匂いを嗅ぐことで味覚が満たされたためらしいです。
これはクロスモダリティ効果というものの一種で、人間の五感が互いに影響し合うことが知られています。
結論
甘い食べ物やカロリーの高い食べ物を含む不健康な食べ物の香りを嗅いでいると、それらの食べ物に対する食欲が失せやすいという研究でした。
味覚と嗅覚って互いに影響し合うのですね。ダイエットをしたいと考えている人には朗報ではないでしょうか。
もしカロリーの高い食べ物を目の前にしたときは、2分ほど匂いを堪能してください。きっと食欲は軽減されているはずです。
参考文献
[1] Biswas, Dipayan and Courtney Szocs (2019), “The Smell of Healthy Choices: Cross-Modal Sensory Compensation Effects of Ambient Scent on Food Purchases,” Journal of Marketing Research, 56 (1), 123-141.
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