高脂肪食(いわゆる高カロリー食)による心不全が子供にも孫にも影響を与えるという2019年にSanford Burnham Prebys Medical Discovery Institute(SBP)から発表された研究です[1]。
肥満は心不全や心筋梗塞を促すため死亡率に強く相関していることが研究で分かっていますが、世代間の心臓病リスクに関するメカニズムは未だ解明されていません。
この研究では、ショウジョウバエを使った実験をしています。
なんでハエを使うのかというと、世代交代が早くて実験しやすいためです。
ハエを使った実験
普通の食事を与えられたハエと高脂肪な食事を与えられたハエで分けて3世代にわたって実験を行い、3世代目のハエの心臓の状態を調べます。
比較として、世代の途中から高脂肪な食事をさせたりもします。
以下の図では、上が世代の古いハエで下にいくほど世代が進みます。
背景が白いハエは普通の食事、灰色のハエは高脂肪な食事を与えられたハエでして、
赤い枠は気にしないでおっけーです。
図では5パターンですが、実際は8パターンで比較実験しているようです。
実験結果
心不全ゆうても色々な要素がありまして、以下の図でいうオレンジ・青・赤が心不全に該当します。
一番上が常に普通の食事を与えられた世代のハエでして、心不全が発症する割合は少ないのが分かります。
また上から5番目のハエ君は2世代分は普通の食事を与えられているはずなのですが、心不全の発症割合が高いですね。
一方、下から2番目のハエちゃんは3世代分普通の食事を与えられたおかげか、心不全のリスクはかなり抑えられていることが分かります。
つまり、高脂肪な食事を与えられると心不全のリスクが2世代に渡って影響してしまうという結果です。
また高脂肪な食事により心不全に関わる遺伝子にも影響が生じていることや、特定のエピジェネティックマーカーや代謝に関わる遺伝子を故意的に操作することで心不全の発症を抑えることができるという研究結果もあります。
まとめ
この研究では、高脂肪食(HFD)によって引き起こされる心不全が2世代後まで持続し、特定の遺伝子にも影響を与えることを示しています。
また、遺伝子を操作することで心不全のリスクを抑えられることも分かりました。
今回はハエを使った実験でしたが、人間の場合はどうなんですかね。
遺伝子に影響を及ぼすことから、人間にも十分当てはまるのではないでしょうか。
妊娠中の食事が子供に影響を与えるという研究も報告されているので、どちらにせよ子孫のために食事は気を付けたいですね。
参考文献
[1] |
M. C. Guida, R. T. Birse, P. C. Toto, A. Dall’Agnese, B. S. Diop, A. Mai, P. D. Adams, P. L. Puri , R. Bodmer, “Intergenerational inheritance of high fat diet-induced cardiac lipotoxicity in Drosophila,” Nature Communicationsvolume 10, Article number: 193 (2019). |
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