今回はBGMが創造力に悪影響を与えるかもしれないという2019年2月に発表されたランカスター大学,セントラルランカシャー大学,イェヴレ大学の研究 [1]を紹介します.
勉強中に音楽を聴いていると集中力が上がると思っている方は要注意です.
音楽が創造力にどれくらい悪影響があるのかも踏まえて実験結果を説明しますね.
ここでいう創造力っていうのは,勉強はもちろん仕事にも重要な能力になります.
実験内容
3つの実験
被験者には以下の3つの曲を聴いてもらい,CRATという創造力を測る言語テストを解いてもらいます.
- 実験1:海外の言語で歌われた曲
- 実験2:歌詞のない曲
- 実験3:母国語で歌われた曲
いずれの実験も,静かな状態でテストしたときの正答率と比較します.
CRATっていうのは例えば,3つの単語が出題されてそれらに共通して繋げられる単語を答えるというものです.
具体的には例えば「dress, dial, flower」という英単語が与えられたら,答えの1つは「sun」です.なぜかというと,「sundress, sundial, sunflower」と繋げられるからです.
結構難しいですよね(笑)
ちなみに実験3のときだけPoMアンケートっていう「緊張」「うつ病」「怒り」「混乱」「疲労」「活力」の6つの気分の測定をテストの前後にしています.
被験者
実験1は30人で,平均年齢は22歳.
実験2は18人で,平均年齢は25歳.
実験3は36人で平均年齢は24歳.
まだまだサンプル数が少ないですね.
実験結果
どんなBGMでも悪影響を及ぼす
いずれの実験においてもCRATの正答率は低下しました.
実験3の結果を以下に示します.縦軸が正答率で横軸が左から順に「静かなとき」「音楽を聴いているとき」「図書館のノイズを聞いているとき」です.
「静かなとき」と「図書館のノイズを聞いているとき」は正答率が約50%ですが,「音楽を聴いているとき」は正答率が40%にまで低下しています.
著者らは「非定常な音はテストにおいて妨害を受けやすいのでは」的なことを言っています.
つまり音量や音圧が安定していない音を聞くことは,創造力の妨害になるということです.
気分はプラスに改善する
実験前後のPoMアンケートの結果から,音楽を聴いた場合にだけ「緊張」「怒り」「混乱」「疲労」の度合いが下がることが分かりました.
音楽は悪い面だけではなく,気分が良くなるという心理的にプラスな効果があるということです.
音楽のポジティブな心理的影響に関してはいくつも研究がなされているので,その確認的な実験です.
まとめ
BGMが創造力に悪影響を与えるという研究を紹介しました.
- どんな音楽でも聴いていると創造力は低下する
- 好きな音楽を聴くことで気分は良くなる
「音楽は集中力を上げてくれる!」と勘違いしていませんでしたか?
それは音楽を聴いて気分が良くなっているだけです.
確かに音楽を聴きながらだとモチベーションが維持されて勉強の継続時間は長くなる気はしますが,短時間で集中して一気に勉強するに越したことはないですよね.
おすすめとしては,勉強の前に好きな音楽を聴いてテンションを上げることです.
勉強中は無音か自然の音が良いです.
参考文献
[1] |
“Background music stints creativity: Evidence from compound remote associate tasks,” Applied Cognitive Psychology, 2019; DOI: 10.1002/acp.3532. |
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